マインドフルネスで「今」に集中、
リーダーシップの向上を目指す

ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長(※1)伊藤 羊一 様

導入プログラム
マインドフルベースのコーチングプログラム
マインドフルリーダーシップ研修
社内内製メタ認知トレーニングの監修
対象階層
ミドルマネジメント層、全社員

Tag

  • リーダーシップ
  • セルフマネジメント
  • パフォーマンス

Index

導入の背景
マインドフルベースのコーチング・プログラム開発がきっかけ
導入の目的
マインドフルネスで「今、この瞬間」に集中し、振り返り、気づきを得る
導入後の変化・成果
直情的にやるのではなく、ひと呼吸置いてから動く人が増えている

「ヤフーの1on1」など、人材育成の面でも、日本企業の中でも先進的な取り組みを行っているヤフー株式会社は、日本企業の中でもいち早くマインドフルネス研修を取り入れたことでも、知られています。
Yahoo!アカデミア学長として、社内の次世代リーダーの育成を担っている伊藤羊一さまに、マインドフルネスプログラム導入の背景や目的などについてお伺いしました。

導入の背景マインドフルベースのコーチングプログラム開発がきっかけ

マインドフルネスを導入した背景について教えてください。

ヤフーには、2014年に設立された「Yahoo!アカデミア」という企業内大学があって、次世代のリーダー育成を行っています。

マインドフルネスに関しては、2015年に弊社のグッドコンディション推進室リーダーが個人的に興味を持って、MiLIの方々とマインドフルベースのコーチングプログラム(※2)を開発したのが導入のきっかけです。

このプログラムの実施に際して、ヤフーからは参加者と開催場所を提供し、13週間にわたって行いました。社内コーチである社員13名が参加してくれて、朝活のような形で、フィードバックをもらいながら、ひとつの型にしていったんです。

導入の際に、気をつかったことはありますか?

当時は「マインドフルネス」という言葉はあえて使わず、「メタ認知トレーニング」と呼んでいました。

なぜ名前を変えたかというと、社員はみんな合理的なことを好む人種なので、これがもともと宗教色を排除した取り組みであっても、正直あまり人は来ないと思っていたんです。それにそのころは、「瞑想」とか「マインドフルネス」に対して、今ほど正しく認識されていませんでした。

だから最初のネーミングを変えたんですけど、やってみたら人がワーッときた。だから、以降はまったく気にしていません。今は「瞑想」も「マインドフルネス」も世間にだいぶ定着してきましたよね。

あとで、参加した人の感想や、申し込み具合を振り返ってみて、「これは断じて必要だ」という確信もありました。先述のグッドコンディション推進室リーダーはそうした効果を、プレゼンティズム(※3)など数値を使いながら証明しているのですが、僕の中ではもう「これは絶対に重要なことだ」と。ヤフーではこれまでに累計2500名以上(2021年4月現在)の社員がマインドフルネスを体験しています。


導入の目的マインドフルネスで「今、この瞬間」に集中し、振り返り、気づきを得る

人材開発担当者として、マインドフルネスを導入した目的は?

まず前提として、Yahoo!アカデミアで、人を導くリーダーになるために、一番大事な価値観として掲げているのが、自分自身をリードしていくこと。そのために自分自身が主体的に自立して、やりたいことに目覚めるということです。

それで、自分の人生に目覚める過程を分解すると、まず自分の譲れない思い、自身の「価値観」を知る必要があります。それを知るために、アカデミアでは各界のリーダーをお招きして、セミナーや合宿を行うなど、様々な取り組みをしているんです。

ただ、セミナーや合宿はいうなれば「ハレの日」。そのときはよくても2、3日経つと忘れてしまう。でも成果を出すためには、「ケの日」である日常で、コンディションを整え、アクションをして、振り返りをして、気づきを得る。このサイクルで回すのが非常に重要だと気づきました。

そこで、マインドフルネスです。マインドフルネスで「今、この瞬間」に集中するスタンスを日々繰り返して、振り返って、気づきを得る。このサイクルを回すことによって、「ケの日」も「ハレの日」になっていく感じがある。結果として、リーダーシップを発揮できるようになり、人々のパフォーマンスが上がっていく。今は、この状態を目指しています。


導入後の変化・成果直情的にやるのではなく、ひと呼吸置いてから動く人が増えている

マインドフルネス導入後、社内で感じた変化はどんなものですか?

他のプログラムを含めての成長だと思うので、マインドフルネスによる影響がどの程度なものかは、正直よくわからないところがありますが、受けた人たちは、メタ認知が発達したというか、直情的に何かやるのではなくて、「それやっていいんだっけ」とひと呼吸置いてから動く人が増えているような感じがします。

世の中の感情的なすれ違いって、ちゃんと話せばわかるのに、冷静になる前に感情をぶつけ合うからダメになりますよね。今は、対人関係で何かあっても「わーっ」とならずに、落ち着いて状況を捉えてから動ける人が増えているような感じがありますね。

やってみることが一番重要

社内にマインドフルネスを根付かせるために、必要なことは何ですか?

色んなやり方あるのかもしれないけど、まずは有志でやってみればいいと思います。やってみてマイナスになることはないし、始業前なら仕事する時間が阻害されるわけでもないですよね。自分たちでやる分にはお金もかかりませんし。

そもそも、こうした研修を正式にやろうとすると、会社側としても「それにはどんな効果があるんだ」と言わなきゃいけなくなります。だからそんなことを言わせないで、ディファクト・スタンダードにしてしまう。それくらいの気概が必要です。

だからある意味、周りからは理解してもらえないほど熱狂する少数の人たちが必要なんだと思います。その熱狂的なグループが自主的にやって、「これ、いいんじゃない?」という最初のスタートアップを作る。それが自然と社内に広がって、会社はそれを追認するというか。そんな状態にしていくことが必要だと思います。

実際のところ、弊社でいうとマインドフルネス・プログラムを開発したグッドコンディション推進室リーダーのように、「これは絶対に必要なものだから」と熱狂する人間が出てこないと、社内カルチャーにするのは難しいと思います。外から刺激を与えるのも大事だけれど、中から変えていく人間が必要なんです。そのためにはやっぱり、やってみることが一番重要だと思います。

(※1)2015年当時

(※2)このプログラムは「マインドフルネス・ベースド・コーチ・キャンプ」というプログラムに昇華して、現在はMiLIで提供されています。

(※3)「プレゼンティズム(Presenteeism)」とは、「出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、充分にパフォーマンスが上がらない状態」を指す言葉。