コンパッション
New Leader Summit報告その1 苦悩するシリコンバレー、ダイバーシティとランチタイムの出会い
2018.05.06
「昨日、私は利巧だった。だから私は世界を変えよう思った。
今日、私は賢くなった。だから今私は自分を変えている。」 ルミ(1207-1273)、ペルシャの詩人
去る5月4日、シリコンバレーど真ん中Computer History Museumにて、LinkedIn社とWisdom2.0共催でNew Leader Summitが開催された。
「シリコンバレーって、皆優秀で裕福だろうから理想を追えるけど、日本ではそうはいかない。」
「アメリカで起っていることは、今さら日本にいる私たちが耳を傾ける必要はないんじゃない?」
あたかもテクノロジーと豊かさの楽園のように誤解されるシリコンバレー。
しかし、今回のサミットで目の当たりにしたのは、私たちと同じ悩みや苦しみの中、ビジネスのみならず生き方の最適化を目指す人たちーーその中でもインスピレーション溢れる気づきとこころざしを持った、新しいあり方のリーダーたちだった。
登壇者や参加者は何を語ったのか、その1~3に分けてご紹介していく。
その1 苦悩するシリコンバレー、ダイバーシティとランチタイムの出会い
その2 コンパッションの旗手 LinkedIn CEOジェフ・ウェイナーの研ぎ澄まされた「ありのまま感」
その3 その3 Googleと急成長スタートアップに共通する姿勢とまとめ
(ぼくらしゃふぇきみこ)
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【浮き彫りになるシリコンバレーの苦悩】
登壇者、参加者の間から共通して、年齢差別、経済的不安と罪悪感――この3つが繰り返し問題として取り上げられる。
「エンジニアにとって、45歳で子供の教育資金やローンを抱えたまま、失職し職探しをするーーこのシナリオは最も恐れられていることよ。」と参加者が語ってくれた。
なぜなら、好景気で転職の流動性が日本よりずっと高いにもかかわらず、多くの企業が40代以上の年齢差別をこっそり行っているからだ。
たとえアイビーリーグ卒、経験豊かなエンジニアでさえ、40代後半となると再就職先を見つけるまで数年かかることもあり、その間持ち家を売ったり、転居を余儀なくされることも多い。
「フェイスブックやグーグルで働いているそこそこ高収入の若者でさえ、いまだに親元に住んでこつこつ貯金をしている。そうしないと物価が高くてこのエリアには住めないから。」
「この先年齢がいってから再就職の難しさや物価を考えると、子供ができても共働きをやめることができない――くたくただけど、なんとかこのサミットには来た。」ーーと言う参加者の様子は、日本で一生懸命働く人たちの様子と何ら変わりはなかった。
そして功を成し名を遂げた人々からも、格差と物価の高騰を起こしたという罪悪感がそこにはある。
「自分がいかに恵まれ特権を与えられているか、痛いほど感じてます。」と同席したベンチャー・キャピタリストは申し訳なさそうに言った。
【年齢差別に直に切り込む「現代の年長者」とは チップ・コンリー】
チップ・コンリー(Chip Conley)はブティックホテルとして世界第2位のJoie de Vivreを創設、24年間CEOを務めた後Airbnbのグローバル戦略トップとなる。(現在はアドバイザー)ベストセラー著者であり、30年来の瞑想実践者としても有名。
チップ:1900年にはアメリカの平均寿命は45歳だったのが、2000年には75歳、つまり100年間で30年寿命は延びている。科学の進化を考えると、平均寿命がさらに30年追加され105歳となる日もありうるのに、企業での権力は若年化し、年齢が上の労働力が尊重されないという逆行状態をおこしている。
この現象に対し、「Modern Elder(現代の年長者)」として組織や社会に影響をもたらしつづけられるよう、自己の研鑽と不公平の是正を広める活動に注力する。
◆ERG(Employee Resource Groups:従業員リソースグループ)――組織のダイバーシティと人材活用を最大化するための社内組織。全米でも多くの会社が採用してきている。
◆Spaciousness ゆったりとした空間・時間=瞑想:自然の中に身を置く、瞑想する、などして、酷使されたシナプス(神経細胞どうしをつなぐ部分)を鎮める。何歳になってもいきいきと活躍し、先の見えないこの時代でも貢献するための偶発性や創造性につながる。
1960年生まれ、57歳の彼だが、自らの活動に敢えて「年長者(Elder)]と明言し、年齢差別に切り込んでいる。そこに瞑想を加えていることも興味深い。
40代で既に年齢の不安を抱えているシリコンバレーで、彼の講演は大きな共感と勇気を呼び、Q&Aは長い列となった。日本でも、55歳で自動的に大幅給与カットされる大企業もある。これも年齢差別・アメリカでは違法ではなかろうか。
既に有名なコーチ・コンサルタントらが彼の「Modern Elder(現代の年長者)」ムーブメントに参画し、今後更に力を増すことを期待したい。
【ハイテク産業におけるダイバーシティの役割 ジェニファー・フォンスタッド、エディー・メディナ】


ジェニファー・フォンスタッド(Jennifer Fonstad)はベンチャーキャピタルAspect創設者で、「Venture Capitalist of the Year」(デロイト社)や「The 50 Most Powerful Moms」に選ばれるハイテク分野で著名な投資家。
エディー・メディナ(Eddie Medina)はベンチャー・キャピタリストとして活躍したのち、BetterUpを設立。コーチングとリーダーシッププログラムを融合させたプラットフォームで大手クライアントを持つ。
ジェニファー:優秀な人材が今日求めているのはMeaning=意義である。優秀な人材と消費者の共感を得るために、企業も利益を超えた意義をもたらすことを求められている。
ダイバーシティで異なった視点をチーム内に持つことは、即ち競争力を高めるので、シビアな投資先の査定でも重要視している。
その結果、自分の投資先は近年約40%が女性ファウンダー、60%が男性ファウンダーとなっている。(木蔵補足――起業家の大半がまだ男性であるハイテク産業において、40%女性ファウンダーへの投資は驚異的に多いと言える)
女性管理職の多い企業では、後続の女性社員が活躍するという現象が見られ、性別によるギャップは、シリコンバレーにおいて改善の兆しを見せている。逆に年齢差別が目立ってきているのは否めない。
エディー:自分自身ペルー移民を両親に持ち、学費のためにデリバリーボーイをした時受けた差別的な経験が、今は人材育成にあたって役立っている。
ダイバーシティを推進し、その結果骨太な組織にしていくためには「自分は差別してないから大丈夫。自分の問題ではない。」という無実をかいかぶった人ごとのアプローチでは変わらない。どんな立場であれ、ダイバーシティを自分の責任として考えられるか?これが重要である。
アメリカでは、VCのビジネスに及ぼす影響は大きなものがある。
人脈、頭脳ともに優れ、投資で高打率をたたき出す彼らは、誰よりも結果で判断されるシビアなプロであり、資金というパワーで新たな産業やリーダーを作っていると言っても過言ではない。
その中でも「Investor of the Year」が女性であり、また利益を超えた意義やダイバーシティを競争力と見ていることは特筆すべきだ。
【ランチタイムに、登壇者ガス・タイ氏に出会う】

ガス・タイ(Gus Tai)雑誌Forbsで「偉大な投資家」の一人に選ばれたベンチャー・キャピタリスト。投資先に対する優れたチームビルディングとビジネスモデルの構築で知られる。スタンフォード大学ビジネススクールなどでも瞑想を教える。
ビュッフェ式のランチの列に並んでいたら、それはフレンドリーな笑顔で話しかけてくれたガスさん。登壇者のお一人とは気づかず(恥)、そのままランチをご一緒した。
ガス:ベンチャー・キャピタリストとしての活動を徐々に引退して、社会活動や教育に関わることを始めている。
20年間瞑想を続けてきたことが、自分の支えの一つと言える。2000の案件のうち1件だけ投資先として選ぶので、成功するには自分の感性を磨くしかないからね。
毎日2時間(!!)瞑想しているよ。(木蔵つぶやきーーもう、「忙しくて瞑想をする時間を取るのが難しい」とは言えない。。。)
様々なシステムに瞑想やマインドフルネスを取り入れて、社会貢献をしていきたい。
そして、ハイテク企業で自分のために瞑想実践をしている人は多いけど、これからは商品やサービスにも、気づきやコンパッションをもっと取り込んでいくべきだ。
さらには、瞑想法を伝えるそのやり方も、よりよくできないかーーと探求している。
まさに生き馬の目を抜くVCの世界で、彼のような影響力の大きなリーダーが20年来の瞑想実践者であることも驚きだが、その優しく大きな安心感にあふれるあり方に感銘を受けた。「ただ者ではない」と感じたのも当然、午後にNew Leaderの目利きVCとして登壇されたのだった。
彼のような優れたリーダーが、今後もマインドフルネスムーブメントを牽引していくと思うと、ますます期待と希望を感じた。
その2 コンパッションの旗手 LinkedIn CEOジェフ・ウェイナーの研ぎ澄まされた「ありのまま感」 に続く
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